(4)無肥料栽培

稲の比較写真
現在、私たちは「自然農法」と呼んでいますが、当初は本農法を「無肥料栽培」と呼んでいました。無肥料栽培とは、肥料を投入せずに、土が本来持っている力-自然力-を発揮させる栽培法です。

本来、あらゆる作物は大地にしっかり根を伸ばし、自然界からこの『自然力』を吸収して育ちます。ところが、肥料を投入すると、作物は根の回りに施された肥料分を吸収することになり、土中の自然力を求めて根を伸ばす必要がなくなるため、根を伸ばす力が退化し、本来の作物の能力が低下してしまいます。

■自然力を求めて根を伸ばす力の比較図

図解:自然力を求めて根を伸ばす力

現代の土は、長年の肥料の投入によって自然力を生む力が損なわれています。自然力を復活させるためには、土壌を本来の清浄なものに戻さねばなりません。そのためには、肥料の使用をやめて、無肥料栽培を行う必要があります。もちろん、農薬、その他、自然力を損なうものの使用は一切やめます。

慣行農法から自然農法へ転換した場合、穀類や芋類などは1年目からでもかなりの収量が得られることがあります。一方、野菜類の場合、作物が自然力を吸収する機能が回復するまでの期間中は生長が悪くなるケースがあります。それは人間でいえば麻薬中毒患者の禁断症状のような状態といえるでしょう。その際には、一切の肥料を与えずに栽培を行い、自家採種を継続し、作物が本来持っている自然力吸収機能の回復を待つ(5~6年程度)のが賢明な策といえます。ただし、水稲栽培では、流水によって肥毒が比較的抜けやすいので、その期間は短くなる場合があります。

自然界の野草に人為肥料が必要ないように、健全な作物には人為的に肥料を与える必要はありません。しかし、自然農法に切り換えて作物の生長不良を見ると、一般の農家は肥料を施さないからと間違った認識をしてしまいます。確かに、肥料を施せば一時的に収量は上がりますが、次第に作物は肥料中毒から不健全になり、一般の農家は常に病虫害発生が気になるようになり、大量の農薬を使用せざるを得なくなってしまいます。

逆に土と種から肥毒が減少していくと、土は自然力を発揮するようになります。そして、作物は根の伸び方が活発になり、病虫害と風水害に強く自然に順応した健全な作物に生長します。何よりも美味な作物ができ、食べることの喜びを堪能することができるようになります。

■自然農法と自然堆肥との関係について

図解:自然農法と自然堆肥との関係について
自然農法では、自然界の循環の中で供給されることのある枯れ草、落ち葉などからなる植物性堆肥を「自然堆肥」と呼んでいます。土が自然力を十分に発揮するようになるまでは5~6年以上といったかなりの期間が必要ですので、それまでの間、自然堆肥を使用する方法があります。自然堆肥は肥料分として使用するのではなく、土を固めないため、温めるため、土の乾燥を防ぐために使用します。

なお、土が作物を育てるのに十分な自然力を発揮していると生産者が判断できる場合には、自然堆肥を使用する必要はありません。土だけで栽培していくことが理想的な自然農法のあり方です。